部屋の外に目を向けましょう
あなたはこのブログをスクリーンから読んでいることでしょう。ですから、この5年ほどの間にテクノロジーが革命を起こしたことはもちろんご存知でしょう。機器はより小さくなり、インターネットはより速くなり、ゲーム、アプリ、エンターテインメントが爆発的に増えています。
ほんの少しの間に、スクリーンで見るエンターテインメントが、子どもにも大人にも当たり前の余暇の過ごし方になったようですね。テクノロジーがいかに楽しく役に立っているか、よく知っている一方で、この状況が家庭にもたらす意味について警鐘を鳴らす人々も少なくありません。
オーストラリアのRoyal Children’s Hospital Melbourne(メルボルンこども病院)によるオーストラリアの子どもの健康に関する調査によると、推奨される使用時間より長い時間スクリーンを見ている子どもがほとんどであることがわかりました。驚くことに、小学生の3分の2、未就学児の3分の1が自分専用のタブレットやスマートフォンを持っているのです。
すべてテクノロジーのせいでしょうか?
これと同時に、偶然はありませんが、子どもがいわゆる「遊び」と呼ばれる遊び方をする時間は減っています。このような変化をもたらした原因は、テクノロジーの変化以外に何があるのでしょう?ここにいくつか示します。
- 大人が忙しく時間がない
- 社会的なプレッシャーや他の子どもたちからの影響で、多くの課外活動に子どもを参加させる
- 人口密度の高い居住環境で、屋外で遊ぶエリアが少ない
- 歩いたり自転車に乗る代わりに、どこに行くときも車を使う
- 子どもの安全に関する不安や恐怖(時に過剰なこともあります)
最後の点についてもう少し述べたいと思います。子どもに安全でいてほしいと誰もが思いますが、現代の親の多くが、どんなことでも子どもに自分でさせることを不安に思っているのが現実です。子どもにまったく害がない時でもです。その一方で、子どもがネット上でどのような情報にさらされているか、親がいつも気づいているわけではありません。
あまり賢いとは言えません…
競争が激しく、学業の成果により重きを置く社会が一つの要因になっていることもおそらく間違いないでしょう。多くの子どもが、小さなうちから教室に通って学んだり個人指導を受けたりすることにより多くの時間を費やしています。これが実は逆効果である可能性もあるのです。
決められた活動をする時間が長すぎて、子どもらしく遊ぶ時間が不十分な子どもは、大切な経験を逃してしまうことがこの記事に説明されています。決められた活動をする時間が長すぎることで、自己コントロール(自分の衝動や感情に対応する力)、計画性、目標に向かって取り組む、などの能力が育たないのです。故スティーブ・ジョブズ氏のようなシリコンバレーの取締役たちの多くも、テクノロジーが自分の子どもに与えうる影響について注意して、家ではきっちりとしたガイドラインを立てているといいます。
多くの人々が言うように、私たちは脳の回路をまさに変えようとしているのでしょうか?このようなテクノロジーの先駆けとなった人々が、今その危険性に警鐘を鳴らしていることを考えると気持ちが冷める思いです。
新しい課題、新しい解決策
でも、すべてが暗く重苦しい話ではありません。このような問題に取り組み、驚くべき解決策を考え出している人々が既にいるのです。
最近私が読んで感銘を受けた話なのですが、問題や課題をどのようによい事に変えることができるかをよく表した話があります。「Kindness Rocks(親切の石)」運動と呼ばれるプロジェクトの一環で、石に絵をかいたり飾りをつけたりして公園に置き、他の人々に見つけてもらうのです。テクノロジーの力を借りて、テクノロジーに頼らない、自然に返る楽しみを人々が創り出しているのです。
最近見つけたもう一つの素晴らしいプロジェクトは、私の住むオーストラリアのクィーンズランド州にあります。「Nature Play QLD(ネイチャー・プレイ・クィーンズランド)」というプロジェクトです。これは、子どもと親がソファーやスクリーンから離れて外の世界に戻る手助けとなる世界的な運動の一環でもあります。
ネイチャー・プレイを通して、子どもたちは泥水の中でしぶきをあげたり、砂で城を作ったり、木登りをしたり、地面を掘ったり、ごっこ遊びで誰がどの役をするかで言い争ったりする楽しみを再発見しています。このような遊びがなぜ大切なのか、親も気づいています。たとえ子ども同士の言い争いでもです!
ネイチャー・プレイ・クィーンズランドのHyahno Moserさんは、我々親には2つの役割があり、この2つの役割のバランスをとることが大事と話します。私も同感です。
- 親は子どもの避難所のような存在(例えば、子どもが転んでけがをした時、何かに少し怖がった時に元気づけてほしい時など)
- 親は子どもの発見を助ける存在―子どもが何かを探し出したり、探究したり、冒険したりするのを助ける存在(言い換えれば、親は一歩引いて、子ども自身で遊びを進めさせ、物事を試したり間違えたりすることから学ばせるということです)
デコボコな地面やあまり慣れていない地面を歩くだけでも、発達中の子どもの脳の新しい領域を活性化して強くするのです。他の子どもたちと経験を共有し、いつも大人の助けを借りることなく社交的な状況で行動することを身につけることは、健全な子ども時代の重要な一部でもあるのです。
今度のお休みにスクリーンから離れてみませんか?
家族全員でスクリーンに向かうことから「休暇」をとるメリットを最近私も経験しました。親戚の一人が12週間子どもと車で旅行し、都会から遠く離れた、オーストラリアの美しい場所に行くことにしたのです。ほとんどキャンプして過ごしたので、電源やインターネットが周りにありませんでした。
最初の3日ほどは、テクノロジーが使えず、子どもたちはそれほど楽しそうではありませんでした。でも、子どもたちはすぐにもっとシンプルな遊びに戻っていったのです。枝を使って何か組み立てたり、皮を落ち葉が流れていくのを眺めたり、石を使ってゲームを始めたり、親と有意義な会話をしたりしました。冗談を言ったり、歌ったり、物語を話したりすることにもっと時間を使うようになりました。言い換えれば、思い出となるようなことをしたので、同じ部屋にいても自分の機器に夢中になって時間を過ごしていた時よりも、お互いの関係がずっと近くなったのです。
インターネット上で入手できる素晴らしい情報を使って、スクリーンに頼らない家族の活動を計画することもできるのではないでしょうか。
国内で、または世界中で、みんな一緒に「スクリーン・ホリデー(スクリーンから休みをとること)」をするアイデアに私は大賛成です。年末年始はその格好のタイミングかもしれませんね。