怒鳴ること―静かに起こっているとは言えない、蔓延した問題
現在、多くの親は子どもを叩くことには問題があること(特に、それにより問題行動が悪化する可能性もあること)はわかっています。しかし、では代わりにどうすればいいのか知らない親もいるでしょう。運がよければ、「タイムアウト」の使いかたについて漠然とした考えを持っている場合もあるでしょう。ですが、特に、関連する子育てスキル、対応策、そして原則の重要性を知らずに、不適切にタイムアウトを使用すると、それもうまくいくとは言えません。
親が声を荒らげることは、少なくとも短期的には、解決策のように感じられるかもしれません。隠れて行われているとしても、怒鳴ることが徐々に「困った時の」しつけ法になりつつあることが調査結果で事例として示されているのも、それが理由でしょう。いつもは暖かくて愛情に溢れた親でも、あらゆる社会経済的グループに属する親にも、これは当てはまります。
ハフィントン・ポストに掲載された、胸が痛くなるほど正直な記事の中で、Rachel Macy Staffordさんは、自分の子どもとの関係が自分の怒鳴り声により、どれほどダメージを受けていたのか気づいた日について、率直に書いています。多くの親と同様、Rachelさんは自分がストレスを感じれば感じるほど、さらに大声を上げ、さらに怒っていました。
この話には多くの人が共感しています。ストレスを感じていると、冷静に問題に対応することは難しくなります。些細なことで一気に爆発したことが、あなたにもあるかもしれません。腹が立っていると、子どもを普段より批判しがちになったり、あるいは自分が「理性を失った」ようにさえ感じて、あとでひどく罪悪感を感じたりする可能性が高くなります。これにより、さらにストレスが生み出され、悪循環が続きます。
すぐに、子どもとの(そして、時にはパートナーとも)やりとりが、双方にとって不快になり、一緒に過ごす時間が短くなることもあるでしょう。それでは、問題はさらに悪化する可能性があります・・・考えてみれば明白なことですが、現状から距離を置いてより広く全体像を考える時間がないことも、ストレスに苦しむ状態の一部なのです。
子どもに怒鳴るのがよい選択肢ではないことは、認めづらいですが真実です。子どもに怒鳴ることが、けんか、攻撃性、反抗的行動の増加に繋がります。問題行動への対処法として効果的ではない方法の多くと同様、効果がなければ、ますます過激になることがあります。きつい言葉や度重なる批判は打撃を与え、そのために鬱や人間関係の問題により陥りやすくなることもあります。
Triple Pでは、親を支援する一つの方法として、典型的な子育てのシナリオが「何」かということに加え、「なぜ」そうなるのかを提示します。怒鳴るといったよく行われているタイプのしつけがなぜ効果的でないのか、特に長期的に見て効果がないのはなぜか、さらなる問題行動につながり逆効果となることがよく起こるのはなぜか、について親が理解するのにとても役に立ちます。例えば、親がイライラすることがあるのは避けられないとしても、それを怒鳴りつけたり叫んだりすることで表現すると、周囲にいる全員に憤りと不安な気持ちを生む可能性があります。よくない行動がさらに悪くなり、悪循環が生まれます。
また、より注目を受けるという形で思いがけずほうびを受けるために、問題行動がさらに引き起こされる場合もあるでしょう。好ましい行動をすることは更に少なくなり、親は子どもが望ましいことをしてもそれを認めることを忘れてしまうかもしれません。この場合も、家族全体にとって悪循環が生み出されることになります。
現在では、親が暖かく愛情を持ちながらも、子どもを導き、公正な制限を設けていると、子どもは幸せに成長し、何を期待されているかを一番よく学べる傾向にあるということが、多くの研究により示されています。親が前向き子育ての対応策を用いて、落ち着いて一貫していることがそれにつながるのです。
ですから、個々の子どもと親のために、そして社会のために、はっきりさせておきましょう。親に対して、子どもを叩いたり怒鳴ったりして欲しくない、と言うのはよいことです。でも、子育てや子どもに対する制限を設けることを効果的にしてほしいと期待するのであれば、怒鳴ることの代わりとなる、エビデンスに基づいた効果のあるスキルや対応策に誰もが簡単にアクセスできるようにする必要があるのです。